食べ歩き1軒目は少し早めのランチから。
栄の大通りから細い路地へ入った奥に店を構える、「元祖味処 叶」を訪ねました。ここは、名古屋名物「みそかつ丼」を初めて提供したお店です。
今や名古屋グルメの代表格となったみそかつを豪快に盛りつけた「元祖味噌カツ丼」(1050円)を看板に、60年にわたって暖簾を守り続けた老舗。その一杯には、元祖の誇りを感じる丁寧な仕事が凝縮されていました。
ゆうに3センチはありそうな肉厚のカツは、軽くかみ切れるやわらかさ。じわっと染みだしたロースの脂と味噌をまとった衣の濃厚な味わいが、口の中に広がります。
これだけ分厚いカツをやわらかく揚げるには、経験によって培われたカンがものをいうそうです。聞けば、季節や油の経過時間によっても揚げ方を変えているとか。揚がり具合に納得がいかない場合は、お客さんには出さないという徹底ぶりです。
ベストを尽くす、と言葉で言うのは簡単ですが、いつでも最高の味を提供するために心を砕いてきたご主人の姿勢には、思わず感じ入るところがあります。私自身も見習いたい、尊い心構えです。
<提供元:ことりっぷ>
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