尾張徳川家の時代、華道や茶道が盛んになった名古屋。古くから文化を楽しむ心が根付くこの場所には今も、伝統芸能や芸術作品にふれることのできるスポットが点在しています。
中部国際空港セントレアから名古屋市街へは電車で30分。その道すがら、空港に程近い焼き物の里・常滑(とこなめ)に立ち寄ってみることにしました。やってきたのは常滑駅から徒歩10分、今年4月にオープンしたばかりの「TOKONAME STORE」です。900年の歴史を誇る常滑焼の伝統を守りつつも、現代にマッチするかわいい器を販売していると知り、ぜひ行ってみたい場所でした。
踊る心を抑えつつ、さっそくギャラリーへ入ると、さまざまな形の器やカップ、アクセサリーがズラリ! きめの細かい土肌と、淡く優しい色合い。あまりにもかわいくて、即座にハートを射抜かれてしまいます。
現代風にアレンジしているとはいえ、長い歴史に磨かれたブランドにはやはり、一朝一夕には到達できない洗練された美しさがあります。そんな本物を日常に取り入れると、自然に「丁寧に生活しなきゃ」という気持ちになるから不思議。普段使いの日用品こそ、質にこだわることが大事なのかもしれません。
ちなみに、店内には常滑焼のカップでコーヒーが飲めるカフェや、カジュアルな雰囲気のなか陶芸体験ができるワークショップもあります。これも、常滑焼の魅力を若い人にも広く知ってもらうための試みとか。
伝統文化に携わる職人は、その歴史を次へ受け継ぐ責任を負っています。だから時には柔軟な姿勢で時代に寄り添い、間口を広げる努力を怠らないのでしょう。900年という伝統の偉大さを、改めて感じずにはいられません。
<提供元:ことりっぷ>
ことりっぷとは、2008年の創刊以来、「軽くてコンパクト」「こだわりの装丁」「情報が信頼できる」と、働く女性を中心に圧倒的支持を得ている旅行ガイドブック。©昭文社